聖女の愛した花園
思わず彼を抱きしめていた。渚はいつも冷静であまり感情の起伏を見せない。弓を射る時なんて特にクールで素敵だと下級生たちから大人気だ。そんな渚が、誰にも言えないつらい秘密を抱えていた。
「……さゆり、もう少しだけこのままでもいい?」
「ええ」
そうして私たちはしばらくの間抱きしめ合っていた。
「私もね、家族仲は良くないの」
「あんなに仲良さそうに見えるのに?」
「あれは取材用だから。本当は父も母も愛人がいるのよ」
渚が自分のことを話してくれたからなのか、私も自然と自分の家族の話をしていた。
「両親は政略結婚だったの。利害関係が一致しているから離婚せずに夫婦を続けているけれど、愛なんてどこにもない。私のこともそう、本当は愛してなんていないの」
「さゆり……寂しかった?」
そう聞かれて驚いた。
「寂しかったのかしら……」
そんな風に思ったこと、一度もない。いや、寂しいという気持ちを押し殺していただけかもしれない。本当はずっと寂しかった。
「私、寂しかった……」
「うん」
「お父様とお母様に、褒めてもらいたかっただけなの……」
「うん……」
渚に寄りかかっているからなのか、彼の心音が聞こえてくる。何故かその音を聞いていると心地よくて安心する。
「さゆりはいつも頑張ってるよ」