聖女の愛した花園
そう微笑みながら頭を撫でてくれた。私がずっと欲しかった言葉と、その手の大きさと温かさにドキッとした。こうして近づくと、渚の喉元が微かに出っ張っているのがわかる。こんなに綺麗な顔をしているけれど、本当に男の子なんだ――。
それから私たちは二人だけで逢瀬を重ねるようになった。渚と過ごす時間は今まで感じたことのない甘やかなものだった。一緒にいるだけで心がときめき、触れ合っているともっと触れたいという欲に駆られる。
「ねぇ、あなたの名前を教えて」
「名前?」
「渚はお姉さんの名前なのでしょう? あなたの本当の名前は?」
「……浬」
「浬。素敵な名前ね」
誰も知らない、私だけが知っている本当のあなた。
「浬、大好きよ」
「さゆり、愛してる」
だけど、本当は気づいている。浬が本当に欲しいものは私じゃない。浬が欲しいのは、自分の子を産んでくれる母体。もっと言えば女児を産んでくれる母体なのだ。何となくわかっていた、私に家の話を打ち明けてくれたのは私という器が欲しいのだということ。