聖女の愛した花園


 それでも良かったの、それで浬という存在が救われるのなら――私は喜んでこの身を捧げたいと思った。偽りでもあなたがくれたときめきは私にとって心地よくて、この気持ちが恋だったらいいと本気で思ったから。それに彼は私と同じ、誰かの理想を生きている。彼の気持ちを理解してあげられるのは私しかいないと思ったから、彼の望む子を産みたい。姫宮浬として生きる道をつくってあげたいと思った。

 だから妊娠したのも、私の意志だった。だって渡されたのがピルじゃないと知りながら飲んだのだから。

「ごめん、さゆり。その、どうするの?」
「浬はどうして欲しい?」

 彼の目をじっと見つめて訊ねた。

「……産んで欲しい」

 その言葉を聞いて安堵した。

「良かった。私も産みたいと思っていたから」
「さゆり……」
「大丈夫よ」

 浬は罪悪感に苛まれているような表情をしていたけど、これは私が望んだことでもある。だから心配しないで。

「もしもし、理子? 久しぶりね。ええ、元気よ」

 私は幼い頃からお世話になっているメイドの理子に電話をかけた。ほぼ私を育ててくれたのは理子と言っても過言ではない、家族のような存在だ。

「理子に大事な話があるの。こちらへ来てくれる?」
「お嬢様、大事なお話とは……」
「会って話すわ」
「承知いたしました」

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