聖女の愛した花園
「私はもう、決めたの」
だから、この子のことは誰にも言わず一人で産む。理子を巻き込んでしまうのは申し訳ないけど、理子なら助けてくれると信じていた。
理子は考えた後、大きく息を吐いた。覚悟を決めた表情をしていた。
「……承知いたしました」
「ありがとう、理子」
「私の母は助産師です。事情を話して協力を仰ぎましょう」
「本当に! 助かるわ」
それから私は体調不良を事情に寮に引きこもるようになった。寮を出入りするのは理子だけで、私との取り次ぎはすべて理子が行った。私を心配して部屋を訪ねてくれる者はたくさんいた。特に透は熱心に通ってくれた。
「どうしてもさゆりお姉さまにお会いできないのですか?」
「申し訳ございません、誰も立ち入らせるなとお嬢様より申し付けられております」
「お姉さま、そんな……」
悲しそうな透の声を聞く度に胸が締め付けられた。だけど透だけには知られるわけにはいかない。
透と出会ったのは中等部の時だった。新入生だった透はいきなり私を訪ね、「妹にしてください」と直談判してきた。突然の申し出にとても驚いたが、透は真剣だった。だけど私は首を横に振った。
「ごめんなさい、私は妹はつくらないと決めているの」
「どうしてですか?」
「私はきっと求められるものを与えられる姉にはなれないと思うから」
蘭華とのことがあり、彼女の望む理想の姉であり続けられる自信がなかった。