聖女の愛した花園


「生まれてきた子どもが私と同じような思いをして欲しくないと思ったの」

 筒見さんは静かに答えた。

「私は確かにさゆりと白雪家を憎んでいた。復讐してやりたいと思っていた。でもあの子は何の罪もない。母親に抱かれることなく生まれたあの子には、私のような思いはして欲しくない」

 そう言った彼女の表情は、何だか憑き物が落ちたように見えた。

「それに私の復讐なんて何の意味もないって気づいたから」
「そう」
「今はただお姉さまの帰りを待つだけよ」

 筒見さんは目を伏せる。笠吹さまが連れて行かれる時、彼女は涙を流しながら笠吹さまを乗せたパトカーを見えなくなるまで見送っていた。

「ねぇ、笠吹さまの妹になったのはお姉さまに近づくためだったんでしょ?」
「最初はね。でも、本当にあの方のことを尊敬していたし、とても好きだったの」

 筒見さんの目が赤くなる。

「あんなに傍にいたのに、私はお姉さまの気持ちを何も知らなかった……」
「……それは、私も同じ」

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