聖女の愛した花園


「それがさゆりの願いでもあるだろうからって……渋々だったけど認めてもらえた」
「理子さんに感謝ですね」
「本当に彼女には感謝してもし尽くせない。この恩に報いるためにも誠心誠意育てるよ」

 彼の横顔から覚悟が感じられた。

「さゆりと僕の子を守ると誓ったし、蘭華とも約束したから」
「これから大変ですね」
「でも、不思議と苦じゃないんだ」

 姫宮さんは穏やかに微笑む。

「お金は必要だし母の面倒も見なきゃいけないし、一人で子どもを育てる大変さもわかってる。でも、やっと自分自身の人生を生きられるんだと思うと、すごく嬉しいんだ」

 とても晴れやかな表情だったが、すぐに影を落とす。

「……隣にさゆりがいてくれたら、もっと良かったんだけどね」
「そうですね……」

 この胸の奥がぽっかりと空いたような喪失感は、今後も消えることはないのだろう。それでも今生きている私たちは、さゆりお姉さまのいない世界でこれからも生きていくしかない。

「そういえば名前、どうするんですか?」
「名前ね……まだ迷ってて」
「決めてなかったんですか?」

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