聖女の愛した花園
* * *
私は鏡の前に立ち、リボンを結ぶ。曲がっていない、よれてもいない、大丈夫。胸には金色の百合のバッジが光っている。
あの事件が起きてから学院もようやく落ち着き、日常が戻りつつあった。穏やかな日常に戻ったということは、事件のことが薄れつつあるということだ。あんなにショッキングな事件があってもいつしか風化していく。
いや、風化などさせない。この百合のバッジに誓い、私はさゆりお姉さまが生きた証を絶対に忘れない。
「見守っていてください、お姉さま」
優しく微笑むお姉さまの写真に向かって呟いた。時計を見るとまだ時間がありそうなので、スピーチの内容を再確認しようとPCを立ち上げる。何度も読み返して校正に校正を重ねたけれど、まだ気になってしまう。さゆりお姉さまから寮長を引き継いで初めてのスピーチだもの、下手なスピーチはできない。
原稿はWordで書いていたので、印刷して持っていかなければならない。今から直したら印刷し直さないといけないのに、やっぱり見直すと細かな言い回しだとか気になってしまう。流石にそこまでの時間はないだろうし、印刷済みの原稿に赤を入れて直そうと思った。