聖女の愛した花園

 私のペン立てには自分のペンの他に密かに現場から持ち去った、さゆりお姉さまのペンも入っている。事件には関係ないし、一本か二本くらいと思って持ち去ってしまった。少しでもお姉さまを近くに感じていたかったから。

 原稿に赤を入れながら思う。きっとお姉さまなら、「透なら大丈夫よ」って微笑んでくださるかしら。「失敗してもいいのよ」って勇気付けてくださるかしら。そう考えながらまた、お姉さまのいない空虚さに胸を痛めることになる。

 私はお姉さまの写真を見つめる。私が憧れ、信じ崇めていたお姉さまは完璧ではなかった。普通に恋をして愛に溺れていた一人の少女だった。それでもお姉さまはたくさんの愛情を注ぎ、優しさで包み込んでくださった。なのに私は何も返すことができなかった。

「透お姉さま」

 コンコンとドアがノックされる。私はハッとして、背筋を伸ばした。

「そろそろお時間ですよ」
「今行く」

 先日姉妹の契りを結んだ妹が呼びに来てくれた。まだ私がお姉さまなんて慣れないけれど、彼女のことはじっくり育てていきたい。お姉さまが私に与えてくださったものを、今度は私が妹に与えてあげたいと思っている。

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