聖女の愛した花園


 何故佳乃子さまの声がするのだろうという疑問は、今は気にしている場合ではなかった。赤ん坊のことが気がかりではあったが、自分のベッドに寝かせて部屋を飛び出した。

 キョロキョロと周囲を見渡しながら、悲鳴が聞こえた方角へと急ぐ。

 その間誰ともすれ違うことはなかった。やはりほとんどの人間が出払っているのだと認識させられる。

「……っ!」

 辿り着いた場所は、寮長室――つまりさゆりお姉さまの部屋だった。

 ドクンドクン、と心臓がけたたましく鼓動する。
 部屋のドアは開いている。覚束ない足で部屋の中に入ると、既に四人の人物がいた。

「あ……あ……」
 腰を抜かしてへたり込み、震えている笠吹さま。

「ああああああっ」
 床にへばりつき、大声で号泣する佳乃子さま。

「……」
 一点を見つめ、呆然と立ち尽くす筒見さん。

「……そんな……」
 両手を口元に当て、後ろによろめく姫宮さま。
 四名の視線は同じものを見つめていた。

「……っ!」

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