聖女の愛した花園


 視界にまず飛び込んできたのは、鮮烈な赤。激しく飛び散ったそれはカーペットを朱に染め上げていた。その中央で横たわる彼女から飛び散ったものだということは、一瞥しただけで嫌でも認識させられる。

 下腹部あたりから大きく染め上げられ、無惨で凄惨としか言いようがない。それなのに、何故か彼女はどこまでも美しかった。長い睫毛は閉じられ、凍りついたような静謐(せいけつ)な表情を湛えている。血の気のない真っ白い顔なのに、何故彼女はここまで美しいのだろう。

 天に愛された聖女は命を散らした瞬間ですら美しいのか――目に焼き付いた光景から逃避するかのように、この現場に相応しくないことを考えてしまっていた。

「……さゆり、おねえさま……」

 力ない声が口から漏れ出る。
 信じられない、信じたくない。さゆりお姉さまが、死んでいる。

「さゆりさまあああああっ」

 佳乃子さまの悲痛な絶叫が耳をつんざく。起き上がることができず、「うそよ、うそよ」と震えながらブツブツ呟き続ける笠吹さま。筒見さんはやはり放心状態で、立っているのがやっとという状態だった。


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