聖女の愛した花園


 死因が刺殺だとしたら全身を滅多刺しにするのが普通だとは思うが、この切り口は刺したという感じには見えない。傷があるのは腹部だけで胸から上や下半身に傷はない。この切り口は、腹を切り裂いて何かを取り出すために開いたような――そんな風に見える。

 何かが脳内にちらつく。サイレンがチカチカと点滅し、何かを知らせようとしている。だがそこに行き着く前に姫宮さまの声が私を現実に引き戻した。

「凶器らしきものは見当たらないな」

 姫宮さまは遺体の周囲を見回している。笠吹さまも頷いた。

「確かに首を絞められそうなものはないわね」
「それだけでなくナイフの類もありませんよ」

 筒見さんも笠吹さんと一緒に部屋の中を調べていた。
 部屋にはベッドの他に勉強机、本棚がある。机にはティーカップが二つ、すぐ近くにティーポットも置いてある。部屋は掃除が行き届いており、ほとんど埃がない。本棚には教科書等の教材や小説が綺麗に並べられていた。
 そして、この部屋で異色を放っているのはカーテンだろう。

「このカーテン、どうして切り取られているんでしょうか?」

 同じことを疑問に思ったらしい筒見さんが口にする。


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