聖女の愛した花園


「一部分だけ切り裂かれたような」
「……少し血がついていますね」

 切り取られたカーテンの先端には血のあとが見える。

「これで血を拭き取ったとか?」
「そうかもしれない」

 私は敢えてこの場では何も言及しなかった。ぐるりと部屋を見回してから言う。

「争った形跡はありませんね」
「透さんすごいですね……警察の方みたい」

 佳乃子さまは感心したように言った。

「所詮は真似事です。ところで最初に見つけたのは佳乃子さまですか?」
「あ、はい。私です」

 佳乃子さまはピンと背筋を伸ばす。

「部屋に鍵はかかっていましたか?」
「いえ、むしろ扉が少し開いていました。さゆりさん、とお呼びしたけれど返事がなくて。もしかして体調を崩されて倒れているのではないかと不安になって入ってみたら……この状況だったのです」

 佳乃子さまは再び顔を青ざめる。

「ねぇ、それよりはっきりさせた方がいいんじゃないかしら」
「何をです? 蘭華お姉さま」
「アリバイよ」

 笠吹さまの言葉に緊張が走る。一瞬にしてピリッとした空気が漂う。


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