聖女の愛した花園
母は辛抱強い人だった。どんな時でも笑顔を絶やさない強い人だと思っていた。だけど、本当はずっとしんどかったのだ。私の前では見せないように、気丈に振る舞っていただけだった。
「自分だけ幸せになろうとしないで! 流奈だって、流奈だって……っ」
張り詰めていた糸がプツンと切れたように、母は大声で泣きじゃくる。私はそんな母をただ抱きしめることしかできなかった。
「お母さん……っ」
それから母は変わった。毎日酒に溺れるようになった。少しでも白雪という文字を見ようものなら、癇癪を起こすようになってしまった。
「流奈、聖リリス女学院に行きなさい」
受験生になった時、突然母がそう言った。
「聖リリス女学院?」
「そうよ。ここにはね、白雪の娘がいるの」
私は思わず血の気が引くような思いがした。
「家柄や血筋が何なの? 同じ人間なのに偉ぶって見下しているあの家族は痛い目見ないとわからないのよ」
「でも、聖リリスの学費なんて――」
「そんなもの、どうにでもなるわ。まだ手をつけていない手切金だってある」
「……でも」
「リリスに行くのよ、流奈!」
母の気迫に私は押されてしまう。
「何があっても白雪の娘に負けてはダメ。あんな家の娘、蹴落としてでものし上がりなさい。いいわね、流奈」