聖女の愛した花園


 母は何かに取り憑かれたようにそれしか言わなくなった。私は志望校を変えざるを得なくなり、聖リリス女学院を受験することにした。見事に合格すると、今度は母がとんでもないことを言い出す。

「流奈、白雪の娘に近づき白雪家を貶める情報を掴んでくるのよ」
「お母さん、何を言ってるの……?」
「だって不公平でしょう? 私はこんなに不幸な目に遭ったのにあの男は今ものうのうと生きている。同じ目に遭ってもらわないと」

 私はゾッとしたし、とてもショックだった。私はお母さんと二人で幸せだったのに、お母さんはずっと不幸だと思っていたなんて。ショックだったし悲しかった。リリスが全寮制だったことはよかったかもしれない。今は少し母と距離を置きたいと思った。

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。白百合寮の寮長、白雪さゆりです」

 母の宿敵である白雪正邦の一人娘、さゆりは正にすべてを持っていた。由緒正しき白雪家の直系にして後継者、誰もが見惚れる美貌、圧倒的なオーラにカリスマ性。私と半分血が繋がっているとは思えない程白雪さゆりは美しかった。さゆりの顔は週刊誌を見た時から知っていたが、写真で見るよりも遥かに美しい。裕福な家庭に生まれ、両親から寵愛を受けて育った愛娘。私の目にはそんな風に映った。


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