聖女の愛した花園
初めて生の白雪さゆりと対面した時、言葉にできない怒りと嫉妬を覚えた。母を捨てた男の娘、何も知らずに蝶よ花よと大切に育てられた娘、母のことを狂わせた元凶。
この女のせいで母は変わってしまった。実際の元凶がさゆりの父であると頭ではわかっていたが、心は既にさゆりへの憎しみに支配されていた。母の言うことに従うのではなく、自分の意志で白雪に復讐してやりたいと思った。
だが私はさゆりとは違う黒薔薇寮に組み分けされてしまった。寮が違う上にさゆりにはたくさんの信者がいる。その上私は外部からきた庶民でかなり浮いてしまっていた。なかなか近づきづらくどうしたものかと悩んでいた時、ある人物に声をかけられる。
「あなた、外部からリリスを受験してきたそうね。とても優秀だと噂がこちらにも届いているわよ」
彼女の名は笠吹蘭華。当時黒薔薇寮長の妹だった。
「なかなか外部から来る人なんていないからあなたに興味があるの。話を聞かせてくれないかしら」
笠吹の名前は知っていた。医者の家系で医療事業を手広く行っており、大きな病院をいくつも経営している。白雪財閥にはやや劣るものの、大層なセレブであることに違いはなかった。
彼女が私に声をかけたのは、珍しい余所者の庶民に興味を抱いたお嬢様の好奇心なのだろう。だが私はこれをチャンスと思った。
「私で良ければ、喜んで」