聖女の愛した花園
リリスにはシスター制度がある。今は廃れつつあるが、寮長が自分の後継者となる妹を選ぶという伝統だけは今も守られていた。彼女はこのまま寮長になる。彼女の妹となれば必然的に白百合寮長との接点ができるのではないだろうか。
私は笠吹蘭華に上手く取り入ることができ、妹になることができた。さゆりとはまた違った意味で目立ち生徒たちから支持を集める蘭華の妹になった途端、周りの見る目が変わった。「流奈さま、ご機嫌よう」と恭しく挨拶する者が増えてきた。この変わり身には呆れて軽蔑するしかなかったが、それでもいい。利用できるものはなんでも利用してやる。
何かとさゆりを敵視して突っかかる蘭華を隠れ蓑にして私は密かに準備を進めた。まずは学院での自分の地位の確保。姉を立て、どんな時も支える従順な妹を演じる。さゆりとは必要以上の交流はしない。あくまで一歩引き、黒薔薇寮長の妹というライン以上には踏み込まない。
「流奈は本当によく気がついてくれるわね」
「当然よ、私の妹なんだから」
「私なんてまだまだ……蘭華お姉さまの足元にも及びません」
「こういう謙虚なところも素敵でしょう?」
「ええ、本当に良い姉妹ね」
さゆりは私に対しても優しかった。だが、こうして微笑まれると馬鹿にされているような気持ちになる。目の前にいるのが血の繋がった妹とも知らず、なんて呑気なことだろう。今はそうやって呑気に笑っていればいい。