聖女の愛した花園


 二年になってそろそろ動き出すことにした。この世に完璧な人間などいない、無敵のマドンナにも何か弱味があるはずだ。さゆりを聖女と崇める者たちの理想を打ち砕くスキャンダルを掴みたい。そう思ってさゆりの周辺に探りを入れようと、密かに白百合寮周辺を彷徨いていた時のこと。

「あれ? 流奈?」
「! 渚さま」

 夜二十時過ぎに黒薔薇副寮長の姫宮渚と会った。

「どうしたの? こんな時間に」
「えっと、少し夜風に当たっていたんです」

 内心冷や汗をかきながらニコッと笑みをつくる。

「でもここ、白百合寮の方だけど」
「少し散歩をしていたんですよ。渚さまこそこんな時間にどちらへ?」
「ちょっと部活のことで部員に相談があってね」
「そうですか」

 ふと胸元を見ると、渚のセーラーのリボンが解けていた。

「失礼ですが渚さま、リボンが……」

 結んで差し上げようとすると、彼女は慌てて制する。

「自分でやるよ。副寮長なのにみっともないね」
「いえ、そういうこともありますよ」

 二人して笑いながら黒薔薇寮へ帰った。それからしばらくして、さゆりが体調を崩して寮に引きこもるようになってしまった。どうやらだいぶ具合が悪いようで、白雪家からメイドが一人世話にしに来る程だった。

 メイドが通りかかったのを見かけたので声をかけてみた。

「お疲れ様です。さゆりさまのお加減はいかがでしょうか」
「あなたは……?」


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