聖女の愛した花園
「愛するさゆりお姉さまの本当の姿、あなたが信じられるのかしら?」
「いいから答えて!」
私は声を荒げた。筒見さんは「ふふっ」と短く笑った後、大声で言った。
「さゆりの腹がね、大きく膨らんでいたの。妊娠してたのよ!」
私は思わず目を瞑った。瞼の裏には礼拝堂で見つけたあの赤ん坊の姿が映る。
「信じられる!? 完璧な聖女が裏で男と子どもをつくっていたなんて! 膨らんだ腹を見た時、思わず笑い出しそうになった。これで白雪を貶められるってね!」
筒見さんは高らかに笑う。
「雛森さんが事件の捜査をすると言い出した時、好都合だと思った。警察の介入が入る前に自分の手で証拠を押さえたかったから。だからあなたには感謝してるわ」
パァン! 突然部屋に乾いた音が響いた。目を開けると、笠吹さまが筒見さんの頬にビンタをしていた。
「恥を知りなさい」
笠吹さまの声は震え、目は真っ赤だった。
「最低よ、流奈」
叩かれた頬に手を当て、筒見さんは短く笑う。
「軽蔑しました? こんなのが妹で」
「……っ」
笠吹さまは拳を握りしめていた。唇を震わせて俯いていたが、やがて顔を上げて筒見さんを真っ直ぐ見つめる。その目に涙などなかった。
「流奈、私の目を見て答えなさい。あなたはさゆりさんを殺したの?」
「殺していません」
筒見さんも真っ直ぐ笠吹さまを見て答えた。
「……そう、わかった」
笠吹さまは目を伏せた。