聖女の愛した花園
認めたくない、だけどこれは紛れもない事実だ。真相を知るためには受け入れて進むしかない。私は大きく深呼吸してから、赤ん坊をさゆりお姉さまのベッドに寝かせる。母親のベッドだからなのか、先程よりも寝顔が穏やかになったように見えた。
「笠吹さま」
私はくるりと振り返って呼びかける。
「質問してもよろしいでしょうか」
「な、何?」
「この部屋で凶器を探してくださっていましたよね」
「ええ……それらしいものはなかったけど」
「何故凶器が首を絞めたものだとわかったのですか?」
笠吹さまは黙って青い瞳を見開く。
「この遺体を見た時、まず疑う凶器はナイフなどの刃物のはずです。でもあなたは首を絞められるものはない、と言った」
「……」
「あの時あなたは遺体に近づこうとしなかった。よく見なければ首を絞められた痕があることにも気づけない。でもあなたは死因が絞殺だと知っていた。何故ですか?」
「み、見えたのよ。首元にある傷が。私、結構目はいいの」
笠吹さまの目は明らかに泳いでいる。
「では、今日はどうしてバッジをしていないのですか?」
「え?」
「いつも胸元にしている薔薇のバッジです」
「あっ!」
どうやら自分でも気づいていなかったらしい。彼女の胸元にはいつも黒薔薇寮長の証である金色のバッジが光っている。なのに今はバッジをしていない。
「付け忘れたのかしら……」