聖女の愛した花園
「おかしいですね。あなたは誰より薔薇のバッジに誇りを持っていたはずです。先代寮長から受け継いだバッジを大事にされていたことはリリス生なら皆知っています」
代々受け継がれるバッジはかなり古いものになるため、錆びていたりメッキが剝がれてしまっていたりする。だが笠吹さまのバッジは常にピカピカの金色だった。これがどういうことなのか、説明されずともすぐにわかる。
「バッジを付けられない理由があったのではないですか?」
「……」
笠吹さまは黙り込む。
「お姉さま……?」
筒見さんが呟いた。じっと姉の顔を見つめていた。
「もう一つ、赤ん坊は腹から取り出された。つまりは帝王切開です。当然ですが医学知識が必要となり、素人ではまずできないと思います。しかし犯人は見事にやってのけました」
私は赤ん坊を包んでいるカーテンとバスタオルを少しめくる。
「へその緒も切って結んであります。これができるということは、犯人には多少なりとも医学知識があるということになります」
この中で医学知識があると思われる人物が一人だけいる。その者の実家は医療事業を中心に行い、大きな病院をいくつも経営している。そして本人も医学部への進学が決まっている。
「笠吹蘭華さん、あなたがさゆりお姉さまを殺害して赤ん坊を取り出したのではないですか?」
名指しすると、笠吹さまの瞳孔は開いており微かに震えていた。
「お姉さまが……?」