聖女の愛した花園
先ほどまでは狂気じみた笑みを浮かべていた筒見さんだが、今は姉のことを信じられないとばかりに見つめている。
「本当に、お姉さまなのですか……?」
「蘭華……」
姫宮さまも呟く。
「蘭華さん、あなたが……?」
顔を青くした佳乃子さまが震えながら訊ねる。
「っ、ころしてない……」
笠吹さまは震える声で呟く。
「確かに赤ちゃんを取り上げたのは私……でもそれだけ。私は殺してない」
「赤ちゃんを取り出したことは認めるんですね」
頷く笠吹さまに対し、筒見さんが訊ねる。
「お姉さまは……赤ちゃんを助けたかったんですよね。医者を志す者としてそのままにはしておけなかったんでしょう?」
「そんなに綺麗なものじゃないわ」
笠吹さまは首を横に振る。
「確かにそれもある、今ならまだ赤ちゃんを助けられると思った。でもそんなに純粋な気持ちじゃない――私は欲しかったの」
「欲しかった?」
笠吹さまはゆっくりとベッドに近づき、すやすやと眠る新生児の頭を優しく撫でる。その表情は慈しみに溢れていたが、どこか恍惚としているようにも感じられた。
「そう、愛した人の産んだ子どもが欲しかったのよ」