聖女の愛した花園
第四章【黒薔薇の檻】
これは私たちが白百合でも黒薔薇でもなく、まだつぼみだった頃。
「蘭ちゃんは絶対にお医者さんになれる。きっと困ってる人を助ける立派なお医者さんになれるわ」
無垢な天使の笑顔でそう言われ、私の心はときめいた。
「さゆちゃんが言うならお医者さんになる。さゆちゃんのこと、わたしが助けてあげる」
「うん、お願いね」
「約束ね」
「約束だよ」
幼い小指を絡ませ合い、指切りげんまんした。時折思う、あの頃のように無邪気に笑い合えていた時間に戻れたらと。いつからか変わってしまった。二人の歩幅は同じだったはずなのに、どうして合わなくなってしまったのだろう。
理由はわかっている、私があなたのことを――。
*
私、笠吹蘭華は医療事業を中心に展開する笠吹メディカルグループの長女として生まれた。業界でもかなりの大手で所謂上流階級であり、自分はお姫様なのだと本気で思っていた。欲しいものはすべて買い与えられ、フランス人の母は少女趣味だったのでフリフリのドレスをよく着せられていた。そんな幼少期を過ごしていたので自分をお姫様だと思っていても仕方ないと思う。
だがそう思っていたのは小学一年生まで。わずか八歳で私は本物のお姫様に出会った。
「蘭華、紹介しよう。父さんが仕事でお世話になっている白雪さんのお嬢さん、さゆりちゃんだよ」
「しらゆきさゆりです」