聖女の愛した花園
「さゆりさん、ごきげんよう」
「ごきげんよう。さゆりさん、今度の日曜うちに遊びに来ませんか?」
「ずるいですわ。さゆりさん、うちに遊びにいらして」
さゆりの周りには常に誰かがいる。クラスメイトはもちろん、別のクラスや上級生まで。理由はすぐにわかった、皆白雪財閥とお近づきになりたいのだ。きっと親にそう吹き込まれたに違いない。私はムカついてさゆりの腕を引っ張った。
「さゆちゃんはわたしと遊ぶのよ!」
休み時間はさゆりを連れ出し、二人だけで学院のバラ園で過ごした。
「ありがとう、蘭ちゃん」
「ううん。はっきりいやだって言えばいいのに」
「そんなこと言えないわよ」
優しいさゆりのことを私が守らねば。そう決意した。さゆりと一緒に過ごす時間は、いつも穏やかで温かくてホッと落ち着く。だけど時折私に微笑んでくれる度、どうしようもなく心臓が高鳴ってしまう時がある。この気持ちが何なのかはまだわからない。
ある日、さゆりが熱を出して早退することになった。何だか朝からずっと赤い顔をしていると思ったら、やっぱり熱があった。保健室で眠るさゆりを迎えに来たのはメイドだった。
「あの、さゆちゃんのパパとママは?」
さゆりの持ち物を整理するメイドに訊ねると、彼女は淡々と答えた。
「旦那様も奥様もお忙しいですから」
「そうですか……」