聖女の愛した花園


 さゆりはある時から体調を崩し、寮に引きこもるようになった。授業にも出ていないらしい。表向きは「さゆりさんったらどうなさったのかしらね」と何でもない風を装っていたが、本音は心配で仕方なかった。風邪を引くことはあっても、寮に引きこもる程重症だったことはなかったはずだ。白雪家からメイドが世話に来ており、他の生徒とは誰であっても会わなかった。佳乃子や透ですら面会を断っているようだ。

 メイドはさゆりが子どもの頃からずっと世話をしている人で、私も顔見知りだった。思い切って声をかけてみた。

「さゆりさんのお加減はいかが?」
「笠吹さま、ご無沙汰しております」

 メイドは私のことを覚えていた。

「さゆりさまは今人と会うことができるような状態ではなくて……申し訳ございません」
「どんな症状なの? うちには腕の良い名医がたくさんいるわ。父に直接診てもらうように頼んでも良くってよ」
「お心遣いありがとうございます。ですが、笠吹さまの時間をいただくわけには参りません。医学部受験を控えていらっしゃると伺っております」
「そんなこと、大した時間じゃないわ」
「いえ、そのお気持ちだけで充分にございます」

 メイドは深々と頭を下げ、そのまま立ち去ってしまった。


< 84 / 176 >

この作品をシェア

pagetop