聖女の愛した花園


 どうしてそこまで頑なに拒むのだろう。何か人に言えないことでもあるの? 本当はとても大きな病気を抱えているのではないだろうか。急に不安になったけど自分自身で否定した。本当に大病を患っているならすぐにでも入院しているはずだ。そうしないということは、少なくとも命に関わる病ではないということ。それならば何かを隠しているということなのだろうか?

「……それを知ったところで、私に何ができるというの?」

 さゆりから距離を置いたのは、私だ。それも理由も告げずに。勝手に怒っていきなり嫌な態度を取って、こんな私に心配されたところで迷惑なだけだ。どうせ今の私は医学部志望のただの女子高生。できることなんてたかが知れている。だけど私は、この時何もしなかったことを大きく後悔することになる。

 その日は午後から課外授業だったが、私は欠席を申し出ていた。受験勉強に集中したかったからだ。先生たちは当然了承してくれた。オペラや美術館なんていつでも行けるし、わざわざこんな時期に行く必要がない。

 誰もいない寮はとにかく静かだった。勉強したり実家から持ってきた医学書を読んだり、模範的な受験生らしく過ごしていた。やがて集中力が切れ、休憩でもしようかと部屋から出た。私はふと、さゆりはどうしているだろうかと考えた。


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