聖女の愛した花園
私は赤ん坊を抱きしめて部屋を飛び出した。誰にも見られないように、カーテンで包んで顔を隠す。今は誰もいないとは言え、万が一誰かに見られたら大変なことになる。
「……いや、ここにいるのは私だけじゃない……?」
さゆりの命を奪った犯人がいる。この学院の中のどこかに犯人がまだ潜んでいる可能性がある。そして、さゆりが体調不良で寮に引きこもるようになった時期を考えれば妊娠が要因だと思うのは自然なこと。
つまり、さゆりを孕ませた人物が犯人なのではないか?
さゆりの妊娠を知っていた人物は限られるだろうし、犯人である可能性は高い。
「……許せない」
さゆりを誑かしておきながら用済みになったと言わんばかりに殺すなんて、絶対に許せない。何よりさゆりを奪ったことが許せない。私が望んでも手に入れられなかったものを手にしていた者に対し、煮えたぎる程の怒りと嫉妬心を覚えた。
私は自室に戻らず、礼拝堂に行った。前黒薔薇寮長である私のお姉さまから、マリア像の下には秘密の床下スペースがあると教えられたことがある。何故そんなところに収納スペースがあるのか誰も知らないが、ちょっとしたリリスの小ネタとして語り継がれているらしい。私は床下を開き、その中に赤ん坊を入れた。
「少しの間だけそこで待っていてね。マリア様が守ってくださるわ」
一度この子を人目につかない場所に隠し、後で迎えに来ることにした。今はこの真っ赤に染まった制服をどうにかしなければ。血がべっとりとこびりついたナイフも。
私は燃え上がる怒りを内に秘め、真っ赤に染まったそれらの処分に向かった――。