聖女の愛した花園
* * *
バラ園の中にある小さな池の中にそれはあった。血染めの制服と果物ナイフ、制服の胸元には黒薔薇のバッジが付けられていた。
「笠吹さまのもので間違いありませんね」
「……ええ」
笠吹さまは一瞥だけして目を伏せる。笠吹さまの話を聞き、全員でバラ園に向かった。私が池から引き上げたものは間違いなく揺るがぬ証拠であるのだが、笠吹さまは筒見さん同様に殺害は否定した。
「犯人は、あの子の父親よ」
彼女の瞳には怒りが滲んでいる。
「だってそうでしょう? さゆりが妊娠していたと知り得た人物は限られている。メイドは知っていた可能性があるけれど、犯行時刻に寮にいなかったのだから不可能。だとしたら残されるのは?」
「子どもの父親、ということですか?」
筒見さんが訊ねる。
「そうよ! それしか考えられないっ」
笠吹さまは興奮気味に大声をあげる。
「その男がさゆりを殺したのよ! きっと子どもが産まれては不都合があったから消したんだわ!」
「待ってください、蘭華さん」
感情が昂る笠吹さまに対し、おどおどしながら佳乃子さまが言う。
「それではこの中に男性がいると言っているようなものですよ」
「そうだよ、蘭華。流石にこの中じゃないよね?」
姫宮さまも同調する。
「だからきっと、どこかに男が潜んで隠れているのよ」
笠吹さまは目をぎらつかせる。