聖女の愛した花園

「それしか考えられないわ。この花園を穢した犯人がどこかにいる。あなたたちの中にどちらかが犯人を隠しているのではなくて!?」

 笠吹さまは私たちに向かって怒鳴る。

「そんなことない!」と姫宮さま。
「私だって違いますっ!」と佳乃子さま。
「私もです」と筒見さん。

 全員そう答えるしかないだろうと思いつつ、私も「違います」と否定した。

「じゃあ誰? 誰がさゆりを……っ。さゆりを返してよ……!」

 笠吹さまは両手で顔を覆って泣き崩れる。筒見さんは寄り添って背中をさすっていた。姫宮さまと佳乃子さまは複雑そうに項垂れている。

 私は思案した。やはりこの問題は避けられない、子どもの父親は一体誰なのか。
 まずこのリリスには男性という存在が極端に少ない。私の親世代まで遡ることになるが、以前男性教師と女子生徒の不純異性交友が発覚し当時大問題になったという。それ以来男性教師は既婚者であることが大前提となり、厳しい採用試験を突破した数名しか採用されない。更に女子生徒との接触は原則授業中のみと最低限に留められる程徹底している。生徒の恋愛対象になりそうな若い男性などこの学院には存在しない。それ故に聖リリス女学院は麗しき花園として成り立っているのである。


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