氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「でしたら、きっと無下にはしないはずです。私は、物ではなく……“妃”として嫁ぐのですから」

その言葉は、自分に言い聞かせるようでもあった。

たとえ愛がなかったとしても、私はこの国の未来を信じて、進まなければならない。

それが――“聖女”と呼ばれた私の、最後の祈り。

静まり返る謁見の間に、突然響いた足音。

「俺を――姫のお共にお遣わしください!」

その声に、皆が振り向いた。

一歩前へ出たのは、包帯を巻いたままの騎士団長、ダリオ・フェルスターだった。

「ダリオ……!」

私の声がかすれる。

彼は私をまっすぐに見つめたまま、膝をつき、拳を胸にあてる。

「どうか。姫を――アナベル様を、命に代えてもお守りいたします!」

その瞳に、迷いはなかった。

私の心が熱くなる。

ダリオがそばにいてくれる――それがどれほど心強いことか。
< 10 / 62 >

この作品をシェア

pagetop