氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
一糸乱れぬ礼装の貴族たち、帝国軍の将たち、そして高位の神官たち――

そのすべての視線が、今、私ひとりに注がれている。

心臓が高鳴る。

足が前に出るたびに、ヴェールが揺れるのが分かる。

あの冷徹な皇帝の前へ、私ひとりで歩いていく。

逃げ出したくなるような緊張と不安が、身体を包んでいた。

でも……それでも、歩かなければならない。

この一歩が、ルナリエの未来へ繋がっているのだから。

そして――

祭壇の前に、彼はいた。

帝国皇帝ルシウス・ヴァルクレア。

完璧な軍服を纏い、まっすぐに私を見つめていた。

その視線があまりにも鋭くて、胸の奥がぎゅっと縮こまる。

でも、私は目を逸らさずに隣に立った。

体がほんの少し震えているのが、自分でも分かる。

すると――

「……緊張するなと言っても、無理だよな。」

隣から、意外なほど穏やかな声が聞こえた。

「結婚式だもんな。」

え……?
< 19 / 62 >

この作品をシェア

pagetop