氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
私は驚いて顔を上げる。

そこには、冷徹と恐れられる皇帝ではなく――

ほんの少し、口元を緩めたルシウス陛下の姿があった。

その一言に、不安でいっぱいだった胸の奥が、少しだけ、温かくなるのを感じた。

「では、誓いの言葉を。」

神官の厳かな声が響くと同時に、ルシウス陛下が私の手をそっと取った。

その手は大きく、そして信じられないほどあたたかかった。

「ヴァルクレア帝国皇帝、ルシウス・ヴァルクレアは――」

低く響く声が、大広間に広がる。

彼は私の名をはっきりと、丁寧に呼んだ。

「ルナリエ王国王女、アナベル・ルナリエを妻とし……」

そのときだった。

彼の深く澄んだ灰色の瞳が、私を真正面から見つめた。

それは、冷たくも、冷酷でもなく――ただ、真っ直ぐに。

「一生、変わらぬ愛を誓います。」

――ドキッ。

胸が大きく跳ねた。

嘘。

この人が、“愛”なんて言葉を口にするなんて。
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