氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
そして兄――王太子レオニス・ルナリエは、自ら軍を率いて戦場に赴いていた。

冷たい風が吹く王宮の回廊で、私はひとり佇み、ため息をこぼす。

「アナベル。」

静かな声に振り向けば、そこには王太子妃のエリオナが立っていた。

美しく穏やかな微笑みを浮かべた義姉。

ふっくらとした腹に、私の瞳がすぐに留まる。

「エリオナ……」

エリオナはそっと自分の腹に手を当てた。

「この子ができたと分かった時には、もう……あの人は戦場にいて……」

優しい声に、ほんの少し震えが混ざっていた。

私は無言でエリオナの手を取り、ぎゅっと握る。

「兄さまは、必ず帰ってきます。あなたのところへ、この子のところへ……きっと」

その言葉が、まるで自分自身に言い聞かせるようで、アナベルの瞳には静かに光が揺れていた。

祈りだけでは届かない世界が、すぐそこにある。

そう、感じずにはいられなかった。
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