氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「どうか……神様、お守りください……」

私は、冷たい石畳の上にひざまずき、今日も朝から晩まで祈り続けていた。

だが、どれだけ祈っても、戦況は一向に好転しない。

届く報せは、いつも帝国・ヴァルクレアに押されているという知らせばかり。

「ここまでか……」

王宮の謁見の間、私と兄の父――ルナリエ国王は、震える手で手紙を握りしめ、ため息をついていた。

戦況悪化の報告が届くたびに、その肩は一層重く沈んでゆく。

「もう……従うしかないのか。あの帝国に……」

その言葉を聞いたとき、私の背筋に冷たい風が走った。

ヴァルクレア帝国に屈する――それは、王としての誇りを捨てるということ。

それ以上に、国王としての座すら奪われる可能性もある。

そして、自分は? 王女である自分は、ヴァルクレアに何を求められるのか。

政略の駒として、誰かに差し出されるのではないか?

生まれてくる義姉の子は? レオニスが命を賭けて守ろうとしている未来は?

胸を締めつけるような不安に、私は声を失った。

静かに、けれど確かに、運命の渦は動き始めていた。
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