氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
冷徹と恐れられていたあの皇帝が、私に……私にだけ、こんな言葉を。

「では王女、誓いの言葉を。」

神官の声に、私ははっと我に返る。

ルシウス陛下は、まだ私の手を握ったまま、優しく見守るような眼差しを向けていた。

私は――震える唇を引き結び、ゆっくりと口を開いた。

この瞬間、何かが確かに変わり始めていた。

「私、ルナリエ王国王女、アナベル・ルナリエは、ヴァルクレア帝国皇帝、ルシウス・ヴァルクレアを、夫とし……」

そこまで口にして、言葉が喉につかえた。

この人に――一生の愛を誓うの?

冷徹だと聞いていた皇帝に。

たった数日前まで、名前さえまともに知らなかった相手に。

唇が、かすかに震えた。

視界が滲む。

でもそのとき、そっと頬に触れる温もりがあった。

「……プロポーズがまだだったな。」

低く、けれどどこか優しい声音。

驚いて顔を上げると、ルシウス陛下が真剣な瞳で私を見つめていた。
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