氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~

第2部 氷の城と、閉ざされた夜

「……何をしたらいいんだろう」

鏡の前で髪を整えながら、ぽつりと呟いた。

皇帝の妻になった今、私には何が求められているのだろう。

国を背負うということ。帝国の“皇后”になるということ。

想像以上に、重くて遠い言葉だった。

着替えを済ませた私は、控えていた侍女に声をかけた。

「皇后として……私は、何をすればいいの?」

すると、侍女は慣れた口調で即座に答えた。

「ひとえに、跡継ぎをお産みなさることです。」

――跡継ぎ。

その言葉が、胸にずしりと落ちた。

昨夜の出来事が、突然現実味を帯びて私の中で広がっていく。

「……私に、できるかしら……」

不安げに呟いたその声に、侍女はひと呼吸置いてから、落ち着いた口調で答えた。

「昨夜の様子では、何ら問題ないかと」

「……っ!?」

顔が一気に真っ赤になった。

思わず振り返ると、侍女はまるで何事もなかったかのように、冷静な表情を保っている。
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