氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「き、聞いてたの……!?」

「いいえ。ですが……聞こえてきたんです。」

さらりと告げられたその言葉に、私はますます俯いてしまった。

昨夜のルシウス陛下の言葉も熱も、頭の中で鮮やかによみがえる。

「……皇帝陛下は、調印式のときからアナベル様をお気に召しておいででした。」

「……え?」

「“あの祈りの姿を見て、あの女を手に入れる”――そう仰せでしたよ。」

私は胸元を押さえた。

それが、本当なら……

彼が、ただ政略の道具としてではなく、“私自身”を見て望んでくれたのだとしたら――

ほんの少し、心の奥があたたかくなるのを感じた。

すると、扉が静かにノックされ、もう一人の侍女が部屋に入ってきた。

その表情は丁寧に整っていたが、どこか張りつめた空気が漂っていた。

「皇后陛下、側妃方がご挨拶に参りたいと仰せです。」
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