氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「……側妃?」

私は思わず問い返していた。

昨夜、ルシウス陛下と交わした熱が、心と身体にまだ残っているというのに。

“側妃”という言葉が、容赦なくその温もりに冷水を浴びせる。

「……皇后様以外の、皇帝陛下の妃たちでございます。」

冷静な言葉が返ってきた瞬間、胸の奥がひどく痛んだ。

私だけではなかったのか。

あの優しさも、あのキスも――誰かにも、同じように与えられていたのだろうか。

唇がかすかに震えるのを感じながら、私はなんとか平静を装って言葉を続けた。

「……どんな方なの?」

「……一人は公爵令嬢、エリザベート様。皇后様が決まる前の――最有力候補とされていた方でございます」

「……!」

心臓がどくんと脈打った。

“最有力候補”――つまり、皇后の座に最も近かった女性。

その人が、今、私に“ご挨拶”を申し出ている。

(この結婚を、どう思っているの……?)

不安と警戒が入り混じる中、私は静かに息を吐いた。
< 33 / 62 >

この作品をシェア

pagetop