氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
むしろ、どこか冷めたような態度すら感じられた。

私は、胸の奥に渦巻く戸惑いと緊張を押し殺しながら、小さく会釈をした。

「……アナベルです。よろしくお願いします。」

一応、丁寧に挨拶をしたつもりだった。
だが――

「それだけですか?」

ピシャリと刺すような言葉。

視線を向けると、今まで一言も私を見なかったカレンが、今度は真っ直ぐに私を睨んでいた。

「こちらのエリザベート様は、この国の公爵令嬢にして、皇帝陛下と正式にご結婚なさる予定だった方なのですよ?」

「……」

言葉を失いそうになったその瞬間、エリザベートが横からそっと手を上げる。

「よしなさい、カレン。王族の方には、私たちのような立場では敵わないわ。」

そう言いながらも、エリザベートの微笑には、どこか冷たい含みがあった。

穏やかな口調の奥に、誇りと皮肉、そしてほんの少しの敗北感が滲んでいる。
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