氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
その声は、冷たいようでいて……なぜか、引き止める温もりが宿っていた。

「……夫婦とは、そういうものか。」

背後から聞こえたルシウス陛下の声に、私は思わず立ち止まった。

「……えっ?」

振り返ると、彼は書類から目を離し、まっすぐ私を見ていた。

その表情は、どこか遠くを見つめているようで――わずかに、寂しさがにじんでいた。

「父は……俺が皇帝になる直前に亡くなった。」

「……そう、だったのですね。」

だから彼が即位したのか。

帝位は、戦いのさなかに引き継がれたものだった。

「母は……病弱で、俺が幼い頃に、もう……」

「えっ……」

一瞬、言葉を失った。

両親が――いない。

この冷徹と噂された皇帝には、家族の温もりが最初からなかったのだ。

「だから、アナベルが両親の話をすると……羨ましくなる。」

静かに語られたその声に、胸が締めつけられた。
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