氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
ルシウスの声音が低く、どこか鋭くなっていた。

「……そうはさせたくない。誰にも、皇帝の血筋を盾にして好き勝手されるわけにはいかない。」

だから、彼は“誰も選ばなかった”。

誰も抱かなかった。

私はそっと胸に手を当てた。

そんな彼が――唯一手を伸ばしたのは、私だった。

その意味が、じわりと心に染み込んでいくようだった。

「でも……彼女たちだって、生身の人間です。」

思わず、私は口にしていた。

声はかすかに震えていたかもしれない。けれど、どうしても伝えたかった。

「……陛下の愛を、望んでいらっしゃいます。」

すると、ルシウスはふっと息を吐いた。

「……ははは……」

小さく笑い出したその様子に、私は戸惑った。

それは、冷たく乾いた笑いだった。

「……俺に愛されたい? あの二人が?」

皮肉を含んだその問いに、私は胸が苦しくなった。

それが、そんなにおかしいことなの?

あの人たちの心まで、冗談にしてしまうの?
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