氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「……陛下」

私はそっと彼の顔を覗き込むように見つめた。

ルシウスの瞳は、どこか影を落としていた。

「もっと、二人の気持ちを聞いてあげてください。彼女たちは……ただ、愛されたかっただけなんです。」

ルシウスは一瞬目を伏せ、わずかに顔をしかめた。

「……チッ。」

小さな舌打ちが聞こえた。

けれどそれは、苛立ちというより、どこか焦りのようにも感じられた。

「生殺しなんて、一番いけないことです。」

私の言葉に、ルシウスの指が止まった。

その手は、机の縁を静かに叩いていたが、やがて動きをやめる。

「……正直、お前にそんなことを言われるとは思わなかった。」

ルシウスは静かに、私の方へ視線を向けた。

その瞳には、わずかな戸惑いと……どこか尊敬のような色があった。

「けど……そうだな。お前の言うとおりだ。」
< 44 / 62 >

この作品をシェア

pagetop