氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
思わず漏れた吐息に、ルシウスの瞳が細められた。

彼は、獲物を捉える獣のような目で、私を至近距離から見つめる。

「君を見ると……泣かせたくなる。」

「……え?」

その言葉の意味を理解できずに、私は彼を見返した。

「“もう止めて”とか、“もうダメ”とか……君が俺の腕の中で甘い声をあげるところを、聞いてみたい。」

その囁きは、甘くて、残酷で――

どこか、支配するような響きがあった。

「そ、そんなこと……言えるわけないです……っ」

私は慌てて顔を覆った。

頬が火照って熱い。

彼に見られたくなくて、手のひらで必死に隠す。

でも――

「そのうち、言わせるから。」

低く、断言するような声が耳元で響いた。

まるで確信しているように。

その言葉に、心の奥がざわりと震える。

怖いのに、抗えない。

拒めないのは、なぜ――?

私はまだ知らなかった。

この男の愛は、ただ甘いだけではなく、魂ごと溶かしてしまうほど、濃く、深く、強いということを。
< 47 / 62 >

この作品をシェア

pagetop