氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
しばらくして――

私は、朝になるたびに咳き込むようになっていた。

喉の奥がひりつき、微熱のようなだるさもある。

「……風邪か。」

ルシウスは軍服の襟を整えながら、私を一瞥した。

その瞳に、少しだけ心配そうな色が浮かんだ気がした。

「医者を呼ぶ。」

「……あ、大丈夫。いいのよ。」

私はすぐに首を振った。

「昔からなの。環境が変わると、よく風邪を引くの。きっとすぐに治るから……」

そう言って笑ってみせたけれど、本当は、身体の奥が少し重かった。

慣れない空気、慣れない人々、そして――慣れない愛。

知らず知らずのうちに、心も体も緊張していたのかもしれない。

「……無理するな。」

ルシウスはそれだけを言うと、軍靴の音を残して扉の向こうへと去っていった。

静まり返る寝室。

重たい空気だけが残された。

相変わらず――彼が優しいのは、夜のベッドの中だけ。
< 51 / 62 >

この作品をシェア

pagetop