氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
肌を重ねるときだけは、名前を呼び、抱きしめてくれるのに。

朝になれば、まるで他人のような顔をして出ていく。

(私は、ただの皇后で……ただの女で……)

喉の奥が、きゅっと痛んだ。

それが咳のせいなのか、胸の奥の寂しさのせいなのか、分からなかった。


昼下がり――

部屋の中に柔らかな日差しが差し込んでいたけれど、私の体調はどんどん悪くなっていった。

「……ごほっ、ごほっ……!」

止まらない咳。喉が焼けるように痛み、体が熱いのに、手足は冷たく震えていた。

「皇后陛下! 大丈夫ですか?」

侍女が慌てた様子で、薬の入った湯飲みを運んできた。

「今すぐお薬を……。医師の処方です。」

震える手で差し出されたそれを、私は疑うこともなく受け取った。

帝国の医師ならば、間違いはないはずだと思っていた。

「……ありがとう」

一口飲んだ瞬間――

「……苦い……っ」
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