氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「……だ、れか……っ……」

助けを呼ぶ声も、もう、まともに出せなかった。

意識が暗闇に引きずられていく中で、私はただ、

――ルシウス、と心の中で叫んでいた。

「アナベル!」

扉が激しく開いた瞬間、ルシウスの声が部屋に響き渡った。

ぼやける視界の中でも、彼の姿はすぐにわかった。

ああ……来てくれた……この人なら、きっとわかってくれる。

「どうした?」

私の顔を覗き込む瞳は、いつも冷静な皇帝のものではなかった。

焦りと怒りがないまぜになった、切実な眼差し。

「……毒です……」

唇が震え、声にならないほどの息苦しさ。

それでも私は、必死に言葉を紡いだ。

「昔……薄めた毒で体を慣らしたことがあって……この症状、同じなんです……」

「毒――⁉」

ルシウスの声が低く、震えた。

すぐさま側近へと怒鳴る。
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