氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
そして次の瞬間、私の隣に立っていた男が、ゆっくりと膝をついた。

騎士団長――ダリオ・フェルスター。

片腕に包帯を巻き、鎧はところどころ赤く染まっている。

「申し訳ございません……俺が、怪我を負わなければ……もっと戦えたのに……!」

その声は悔しさに震え、私の心を刺した。

すると兄がすぐに歩み寄り、彼の肩を掴んだ。

「自分を責めるな、ダリオ。あれが引き際だったんだ。お前が退いてくれたおかげで、俺は部隊を立て直せたんだよ」

そう言って、兄は静かに微笑んだ。

その温かな言葉に、ダリオの肩がかすかに震えたのを、私は見逃さなかった。

「それで……和平交渉の結果はどうだったのだ?」

父の問いに、兄は一歩前へ進み、深く頭を下げた。

「はい。ヴァルクレア帝国は、和平を受け入れてくれるとのことでした」

「……よくやった!レオニス!」

父は、目を潤ませながら兄を力強く抱きしめた。国を守った安堵が、声ににじんでいる。
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