氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「ただ――」

「どうした?条件があったのか?」

父の眉がぴくりと動いた。

「はい。条件があります」

「金か? 土地か? まさか奴隷などという要求ではあるまいな……?」

苛立ちを抑えきれぬ様子で父が問い返すと、兄は一度目を伏せたあと、まっすぐ私を見つめた。

「……アナベルを。帝国皇帝ルシウス・ヴァルクレアが、“聖女”を妻として迎え入れたいと」

「……え?」

私の心臓が、一瞬止まったような気がした。

「何ですって……!?」

父の声が怒気を含んで震える。

「それは人質ではないか! 王女を差し出せというのか、あの冷酷な皇帝に!」

兄は黙ったまま、私から視線を外さなかった。

そのまなざしに――ただの命令でも、政略でもない、何か深い決意が宿っているように感じて、私は胸を掴まれた。
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