氷の皇帝と、愛に凍えていた姫君 ~政略結婚なのに、なぜか毎晩溺愛されています~
「ダメだ! ダメだ! そんな話、受け入れられるものか!」

父が叫ぶように言った。

王の威厳など忘れたように、ただのひとりの父として怒りを露わにしていた。

「敵国にアナベルを……私の、かわいい娘をやるなど……!」

その言葉に、私は息をのんだ。

国のために、王族として生まれた者の宿命だと理解していたはずなのに、父の叫びが胸に染みた。

兄は顔を曇らせながら口を開いた。

「……私も、最初は断りました。だが、どうしても“聖女”を手に入れたいと。そう皇帝陛下は仰ったのです」

「“あの冷徹皇帝”がか……!」

父の怒声が響く。あの男が、情や慈悲から誰かを求めるとは思えない。

彼にとって私は、ただの象徴であり、所有物にすぎないのだ。

胸が苦しくなって、視界がにじんだ。

涙が頬を伝って落ちる。

私は――ずっと、結婚とは愛にあふれたものだと思っていた。

優しくて、温かくて、互いに想い合うものだと信じていた。

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