愛しのマイガール
それから毎日、私は英子さんの言葉を胸の中で静かに反芻していた。
——所作は、それについてくるもの。“整える”より、“宿す”ことを意識する……
それは、私が思っていた“上品さ”という言葉のイメージをやさしく裏返すものだった。
誰かの真似じゃなくて、瑠璃としてふるまう。
そう考えるだけで、少しだけ肩の力が抜けた気がして。
私は、素直にそうありたいと思った。
それでも、それはたかだか数日程度で身につくものでもなく。動作を繰り返すほどに、体は正直に悲鳴を上げ始める。
テーブルマナー、姿勢、歩き方──所作のひとつひとつを、英子さんの言葉を思い出しながら、繰り返し練習した。
朝食のあとの時間を使って、ナプキンの折り方を復習した。廊下を一人で歩くときも、背筋と視線の位置を意識してみた。
飲み物のグラスを持つ手の角度さえも、ふとした瞬間に思い出しては修正した。
ただの見せかけじゃない、本当の意味での「ふるまい」を身につけるため。誰かの期待に応えるためじゃなく、ハルちゃんの隣にちゃんと立てる自分になるため。
たったそれだけの理由だったけれど、私にはそれがとても大事なことだった。