愛しのマイガール
(このまま別れちゃうの、ちょっと寂しいな……)
そんな事を考えながら駅までの道を歩いていると、ふいに翔真さんが言った。
「そうだ、瑠璃。来週改めてデートしようか。どこか良い店に予約入れるよ」
「え、ほんと?」
「うん。せっかくだし、ちゃんとしたレストランでも行こう」
「うん、楽しみ!」
私はぱっと顔を明るくして答えた。その笑顔を見て、翔真さんも満足そうに頷いた。
その時の私は、何も疑っていなかった。ただ、信じていた。この人は忙しいけど、私のことをちゃんと大切にしてくれているんだって。
駅前に着いても、翔真さんは手を離さず、名残惜しそうに言った。
「また連絡する。気をつけて帰れよ」
「翔真さんも。今日は誘ってくれてありがとう」
手を振って別れたあと、私はひとり電車に揺られながら、さっきまでの会話を思い返していた。
——少しだけだったけど、会えてよかった。
やっぱり、好きだなって思った。
その夜、ベッドに入った私は、翔真さんと過ごした時間を思い出しながら幸せな気持ちのまま目を閉じた。
まだ何も知らない。
何かが壊れる音が、すぐそこまで迫っていたとしても。
この夜だけは確かに、心から笑っていた。